目次  †
   -  目次 
-  著作権  
-  著作物  -  著作物を巡る変化  -  著作物の変化 
-  コピー用媒体の変化 
-  コピー以外の利用の仕方の変化 
-  著作権 vs 所有権 
 
-  著作物の保護対象  -  「思想または感情」の表現であること 
-  「創作的」なものであること 
-  「表現したもの」であること 
-  「文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」であること 
-  プログラムの著作物 
 
-  加工された著作物  
-  組み合わされた著作物  -  共同著作物 
-  集合著作物 
-  結合著作物 
-  編集著作物 
-  データベースの著作物 
 
-  著作物か否かの判定  -  創作性の存在 
-  アイデアではなく表現されたもの 
-  固定されたものとは限らない 
-  著作物には触れることはできない 
 
 
-  著作権の対象となる具体例 
-  権利の目的とならない著作物 
-  職務著作(法人著作)  -  「法人その他の使用人の発意」に基づくこと 
-  「業務に従事する者」によって作成されたこと 
-  「法人等の名義によって公表」するものであること 
-  著作権について「別段の定めがない」こと 
 
-  映画の著作物の著作者 
-  著作者  
-  著作者人格権と著作財産権  -  著作権法の保護を受ける著作物と受けない著作物 
-  著作物の自由(無断)利用 
-  著作権の保護期間  
-  著作権の譲渡 
-  著作権の消滅 
-  著作物の利用許諾 
-  登録 
 
-  著作権の侵害  
-  著作隣接権  -  各権利者の権利  -  実演家の権利 
-  レコード製作者の権利 
-  放送事業者の権利 
-  有線放送事業者の権利 
 
-  「レコードに録音された実演」と「ビデオに録画された実演」の違い 
-  著作隣接権の保護期間 
-  著作隣接権の制限(自由利用) 
-  著作隣接権の譲渡 
-  著作隣接権の消滅 
-  共有に係わる著作隣接権 
-  著作隣接権の登録 
 
-  一般個人のプライバシー権の保護 
-  プログラムに対する著作権 
-  ソフトウェアに対する著作権 
-  参考文献 
    著作権  †
  著作権は人権である  †
  規定とは「本来自由にできることを、行政機関が許認可制度などでコントロールすること」を意味する。例えば、山で新しい薬草を発見したとしても、これを勝手に薬として販売することはできないのである。薬として販売するには政府の許可が必要である。このように「官」が「民」を制御するための制度が「規定」である。
  これに対して、著作権は憲法・法律に基づいて人(法人を含む)に保障される人権である。「著作権があるから無断に使えない」という状況は、「他人の土地を無断で使えない」という状況と同様であり、「民」vs「民」の関係にあるわけである。
  著作権法の趣旨は、「著作権という人権を保護すること」(創作者にインセンティブ*1を与えること)によって、文化の発展に寄与することにある。
  分類  †
  著作権は次のように分類される。
 - |作権 - 著作者の権利 - 著作人格権:「心」を守る。
- C作財産権:「財布」を守る。
 
- 著作隣接権:伝達者の権利
 
 一般に著作権と呼ばれるときは、´↓のどれかを意味している。多くの場合はを指している。厳密に分類しないと、混乱の元なので、当ページでは上記のようにきちんと区別して考えていきたい。
  海外における著作権の考え方  †
  米国などのアングロサクソン系の国々は、,諒欷鄂綵爐低く、しか十分に保護していない。例えば米国では、著作隣接権はまったく保護されていない。
 の中でも最も代表的な権利は「無断でコピーされない権利」である複製権である。そのため、英語では著作権のことを「コピーライト」と呼ぶわけである。
  ,鮗蠍く保護しているドイツやフランスでは、直訳すると「著作者権」となる用語が用いられる。
  また、日本語の 崔作権」という用語も、英語の「コピーライト」より広い概念を指す。
  著作物  †
  著作権法2条1項1号では、著作物の要件が定義されている。
 著作権法2条1項1号【著作物】
  思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
  まとめると、次の4つの要件が満たされるものが、著作物の保護対象となる。
 - 「思想または感情」の表現であること
- 「創作的」なものであること
- 「表現したもの」であること
- 「文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」であること
例:著作物となるもの vs 著作物とはならないもの
 - 著作物となるもの - スナップ写真 - 背景や構図などに撮影者の創作性が表現されるため、著作物となりうる。
 
- 即興演奏や即興歌唱 
- 百貨事典
- 新聞
- 職業別電話帳 - 選択または配列によって創作性を有するので、編集著作物である。
 
- すでに選考して存在する著作物と類似あるいは同一のものであっても、先行物を知らずに偶然(善意)に作成された創作物は、別個の著作物となる。←「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」
- 芸術的な建築物。歴史的価値は問わない。
- 取扱説明書
- 商品紹介パンフレット
- 体系的なデータベース
 
- 著作物とはならないもの - データ
- 数値
- アイデア - アイデアは未だ「表現されたもの」ではないため、著作物ではない。
 
- 防犯カメラや街頭カメラの映像
- ありふれた建物
- 単なる情報や事実の伝達
- 他人の著作物の真似や模倣によるもの
- 証明写真
- 誰が作成しても同じ内容になる短い文章
- 50音別電話帳
 
[補講]著作物にはならなくても、「カメラの映像」「証明写真」などは個人情報保護法の対象になるものはある。
  著作物を巡る変化  †
  著作物の変化  †
  かつての著作物は、小説・音楽・写真などが主であった。現在では、デジタル機器の普及により、プログラム・データベース・ゲームソフトなどといったものが増えてきた。よって、多くの人々が日常生活の中において、これまでよりもはるかに多くの種類の著作物と関わるようになった。
  コピー用媒体の変化  †
  かつてのコピー用媒体といえば、カセットテープやMDといったものであったが、現在ではCD/DVD/HDDなどの媒体が登場しており、簡単かつ大容量のコピーが可能となった。さらにiPodなどの携帯MP3プレーヤーの登場より、簡便にデータを持ち運びでき、どこでも利用できるようなったのである。
  コピー以外の利用の仕方の変化  †
  著作物の利用方法の中で、コピーを作ること以外のものが変化してきた。従来はTVやラジオなど受身の立場で著作物を見聞きしてきた。しかし、現在ではインターネットを用いたインタラクティブ送信などが行われるようになり、PCを持つ人々が放送局と同じように自ら公衆向けの送信ができるようになった。
  著作権 vs 所有権  †
  一般に商品を購入すると、その物の所有権が移転することになる。しかし、所有権は有体物をその客体とする権利である。例えば、ある絵画の所有権は、その物理的存在について及ぶに留まり、その絵画を撮影した写真まで及ぶものではない。よって、絵画を購入しても、そこに描かれている絵画の著作権と所有権は別個に発生・移転・存在する。
  著作物の保護対象  †
  「思想または感情」の表現であること  †
  簡単にいえば、作成者の考えや思いが表現されているということである。人間の知的・精神活動の結果として表現されたものである必要があるのだ。
 - データ・数値、単なる雑報および事実の伝達といったものは、作成者がそれらの収集や作成にどんなに苦労したとしても、要件を満たさないので著作物に該当しない(法10条2項)。
- 思想や感情が存在しない自動撮影されている防犯カメラの映像や証明写真、誰が作成しても変化しないようなありふれた表現や文章についても同様である。
- 事実やデータといった素材を、工夫してグラフにしたり統計資料となれば、それは著作物となりうる。
- 【「雑報および時事の報道」の判例:「日刊情報事件」福岡地判昭和59.9.28】 - 新聞や雑誌の記事は、単なる時事の報道にとどまらず、その発行者の主張や情勢分析とそれに基づく方針の提起などが盛り込まれているので、著作物となりうる。
 
- 【「事実と創作性」の判例:「壁の世紀事件」東京地判平成10.11.27】 - 資料に基づく事実に関する記述であっても、どのような表現で記述するかについて、創作的に著者の個性を発揮しているものは、著作物となりうる。他方、短い文章の直訳や事実を機械的に表現した部分については、創作的な表現の余地がないものとして著作物性が否定される。
 
- ストーリーそのものは「思想または感情」の表現ではない。
「創作的」なものであること  †
  作者が独自に考え・思いついたものであって、他人の真似・模倣でないものということであり、「個性・独自性」の存在が必要である。その創作性には、進歩性や学術・芸術性の高低は要件とされない。
  特許権における発明とは異なり、新規性は創作性の要件ではない。
 - 幼児の書いた絵画にも、創作性が認められうる。つまり、著作物となる。
- 【「既存の著作物と同一性のある作品」の判例:「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」最判昭和53.9.7】 - 既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、後の作者において既存の著作物の存在・内容を知らず、偶然に作成された創作物は別個の著作物として認められうる。
 
- 【「創作性の程度」の判例:「当落予想表事件」】 - 総選挙の立候補予定者名簿に○・△・▲の符号を付した結果予測を立候補予定者の当落という曲面から記述したものであり、ひとつの知的精神活動の所産であり著作物と認められた。つまり思想または感情の外部的表現に著作者の個性が何らかの形で現れていれば足りるわけだ。
 
「表現したもの」であること  †
  作者自身の知的活動の結果が客観的に認められ、他人から認識し得るものである必要がある。具体的にいうと文字・記号・色彩・図形・音階(音符)・演奏・口述(インタビューの受け答えや講演・講義)などである。