著作権 - Security Akademeia
目次 †
- 目次
- 著作権
- 著作権は人権である
- 分類
- 海外における著作権の考え方
- 著作物
- 著作物を巡る変化
- 著作物の変化
- コピー用媒体の変化
- コピー以外の利用の仕方の変化
- 著作権 vs 所有権
- 著作物の保護対象
- 「思想または感情」の表現であること
- 「創作的」なものであること
- 「表現したもの」であること
- 「文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」であること
- プログラムの著作物
- 加工された著作物
- 二次的著作物
- 組み合わされた著作物
- 共同著作物
- 集合著作物
- 結合著作物
- 編集著作物
- データベースの著作物
- 著作物か否かの判定
- 創作性の存在
- アイデアではなく表現されたもの
- 固定されたものとは限らない
- 著作物には触れることはできない
- 著作物を巡る変化
- 著作権の対象となる具体例
- 権利の目的とならない著作物
- 職務著作(法人著作)
- 「法人その他の使用人の発意」に基づくこと
- 「業務に従事する者」によって作成されたこと
- 「法人等の名義によって公表」するものであること
- 著作権について「別段の定めがない」こと
- 映画の著作物の著作者
- 著作者
- 著作者の推定
- 著作者人格権と著作財産権
- 著作権法の保護を受ける著作物と受けない著作物
- 著作物の自由(無断)利用
- 著作権の保護期間
- 例
- 著作権の譲渡
- 著作権の消滅
- 著作物の利用許諾
- 登録
- 著作権の侵害
- 権利の救済
- 著作隣接権
- 各権利者の権利
- 実演家の権利
- レコード製作者の権利
- 放送事業者の権利
- 有線放送事業者の権利
- 「レコードに録音された実演」と「ビデオに録画された実演」の違い
- 著作隣接権の保護期間
- 著作隣接権の制限(自由利用)
- 著作隣接権の譲渡
- 著作隣接権の消滅
- 共有に係わる著作隣接権
- 著作隣接権の登録
- 各権利者の権利
- 一般個人のプライバシー権の保護
- プログラムに対する著作権
- ソフトウェアに対する著作権
- 参考文献
著作権 †
著作権は人権である †
規定とは「本来自由にできることを、行政機関が許認可制度などでコントロールすること」を意味する。例えば、山で新しい薬草を発見したとしても、これを勝手に薬として販売することはできないのである。薬として販売するには政府の許可が必要である。このように「官」が「民」を制御するための制度が「規定」である。
これに対して、著作権は憲法・法律に基づいて人(法人を含む)に保障される人権である。「著作権があるから無断に使えない」という状況は、「他人の土地を無断で使えない」という状況と同様であり、「民」vs「民」の関係にあるわけである。
著作権法の趣旨は、「著作権という人権を保護すること」(創作者にインセンティブ*1を与えること)によって、文化の発展に寄与することにある。
分類 †
著作権は次のように分類される。
- |作権
- 著作者の権利
- 著作人格権:「心」を守る。
- C作財産権:「財布」を守る。
- 著作隣接権:伝達者の権利
- 著作者の権利
一般に著作権と呼ばれるときは、´↓のどれかを意味している。多くの場合はを指している。厳密に分類しないと、混乱の元なので、当ページでは上記のようにきちんと区別して考えていきたい。
海外における著作権の考え方 †
米国などのアングロサクソン系の国々は、,諒欷鄂綵爐低く、しか十分に保護していない。例えば米国では、著作隣接権はまったく保護されていない。
の中でも最も代表的な権利は「無断でコピーされない権利」である複製権である。そのため、英語では著作権のことを「コピーライト」と呼ぶわけである。
,鮗蠍く保護しているドイツやフランスでは、直訳すると「著作者権」となる用語が用いられる。
また、日本語の 崔作権」という用語も、英語の「コピーライト」より広い概念を指す。
著作物 †
著作権法2条1項1号では、著作物の要件が定義されている。
著作権法2条1項1号【著作物】
思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
まとめると、次の4つの要件が満たされるものが、著作物の保護対象となる。
- 「思想または感情」の表現であること
- 「創作的」なものであること
- 「表現したもの」であること
- 「文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」であること
例:著作物となるもの vs 著作物とはならないもの
- 著作物となるもの
- スナップ写真
- 背景や構図などに撮影者の創作性が表現されるため、著作物となりうる。
- 即興演奏や即興歌唱
- 楽譜上に書かれていないものでも著作物となる。
- 百貨事典
- 新聞
- 職業別電話帳
- 選択または配列によって創作性を有するので、編集著作物である。
- すでに選考して存在する著作物と類似あるいは同一のものであっても、先行物を知らずに偶然(善意)に作成された創作物は、別個の著作物となる。←「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」
- 芸術的な建築物。歴史的価値は問わない。
- 取扱説明書
- 商品紹介パンフレット
- 体系的なデータベース
- スナップ写真
- 著作物とはならないもの
- データ
- 数値
- アイデア
- アイデアは未だ「表現されたもの」ではないため、著作物ではない。
- 防犯カメラや街頭カメラの映像
- ありふれた建物
- 単なる情報や事実の伝達
- 他人の著作物の真似や模倣によるもの
- 証明写真
- 誰が作成しても同じ内容になる短い文章
- 50音別電話帳
[補講]著作物にはならなくても、「カメラの映像」「証明写真」などは個人情報保護法の対象になるものはある。
著作物を巡る変化 †
著作物の変化 †
かつての著作物は、小説・音楽・写真などが主であった。現在では、デジタル機器の普及により、プログラム・データベース・ゲームソフトなどといったものが増えてきた。よって、多くの人々が日常生活の中において、これまでよりもはるかに多くの種類の著作物と関わるようになった。
コピー用媒体の変化 †
かつてのコピー用媒体といえば、カセットテープやMDといったものであったが、現在ではCD/DVD/HDDなどの媒体が登場しており、簡単かつ大容量のコピーが可能となった。さらにiPodなどの携帯MP3プレーヤーの登場より、簡便にデータを持ち運びでき、どこでも利用できるようなったのである。
コピー以外の利用の仕方の変化 †
著作物の利用方法の中で、コピーを作ること以外のものが変化してきた。従来はTVやラジオなど受身の立場で著作物を見聞きしてきた。しかし、現在ではインターネットを用いたインタラクティブ送信などが行われるようになり、PCを持つ人々が放送局と同じように自ら公衆向けの送信ができるようになった。
著作権 vs 所有権 †
一般に商品を購入すると、その物の所有権が移転することになる。しかし、所有権は有体物をその客体とする権利である。例えば、ある絵画の所有権は、その物理的存在について及ぶに留まり、その絵画を撮影した写真まで及ぶものではない。よって、絵画を購入しても、そこに描かれている絵画の著作権と所有権は別個に発生・移転・存在する。
著作物の保護対象 †
「思想または感情」の表現であること †
簡単にいえば、作成者の考えや思いが表現されているということである。人間の知的・精神活動の結果として表現されたものである必要があるのだ。
- データ・数値、単なる雑報および事実の伝達といったものは、作成者がそれらの収集や作成にどんなに苦労したとしても、要件を満たさないので著作物に該当しない(法10条2項)。
- 思想や感情が存在しない自動撮影されている防犯カメラの映像や証明写真、誰が作成しても変化しないようなありふれた表現や文章についても同様である。
- 事実やデータといった素材を、工夫してグラフにしたり統計資料となれば、それは著作物となりうる。
- 【「雑報および時事の報道」の判例:「日刊情報事件」福岡地判昭和59.9.28】
- 新聞や雑誌の記事は、単なる時事の報道にとどまらず、その発行者の主張や情勢分析とそれに基づく方針の提起などが盛り込まれているので、著作物となりうる。
- 【「事実と創作性」の判例:「壁の世紀事件」東京地判平成10.11.27】
- 資料に基づく事実に関する記述であっても、どのような表現で記述するかについて、創作的に著者の個性を発揮しているものは、著作物となりうる。他方、短い文章の直訳や事実を機械的に表現した部分については、創作的な表現の余地がないものとして著作物性が否定される。
- ストーリーそのものは「思想または感情」の表現ではない。
「創作的」なものであること †
作者が独自に考え・思いついたものであって、他人の真似・模倣でないものということであり、「個性・独自性」の存在が必要である。その創作性には、進歩性や学術・芸術性の高低は要件とされない。
特許権における発明とは異なり、新規性は創作性の要件ではない。
- 幼児の書いた絵画にも、創作性が認められうる。つまり、著作物となる。
- 【「既存の著作物と同一性のある作品」の判例:「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件」最判昭和53.9.7】
- 既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、後の作者において既存の著作物の存在・内容を知らず、偶然に作成された創作物は別個の著作物として認められうる。
- 【「創作性の程度」の判例:「当落予想表事件」】
- 総選挙の立候補予定者名簿に○・△・▲の符号を付した結果予測を立候補予定者の当落という曲面から記述したものであり、ひとつの知的精神活動の所産であり著作物と認められた。つまり思想または感情の外部的表現に著作者の個性が何らかの形で現れていれば足りるわけだ。
「表現したもの」であること †
作者自身の知的活動の結果が客観的に認められ、他人から認識し得るものである必要がある。具体的にいうと文字・記号・色彩・図形・音階(音符)・演奏・口述(インタビューの受け答えや講演・講義)などである。
「文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」であること †
著作物となりうるには文化的な精神活動の範囲全般に属するものと認められれば足りる。しかし工業製品のデザインなどの産業的範囲にのみ属する所産(意匠など)は著作物とは認められない。
著作権法10条に具体的な著作物の例示がされている。あくまで例示であり、例示されていないものは著作物ではないというわけではない。次に例示されているものを挙げる。
- 小説・脚本・論文・講演その他の言語の著作物
- 著作物の題号は、例えば「我輩は猫である」のように独特のものであったとしても、それ自体に思想または感情が表現されているわけではない。よって、原則として著作物の題号は著作物ではない(2条1項1号)。
- 音楽の著作物
- 舞踏または無言劇の著作物
- 「振り付け」は創作性があれば「舞踏または無言劇の著作物」(10条1項3号)に該当する。
- 絵画・版画・彫刻その他の美術の著作物
- 応用美術であっても、鑑賞の対象たり得る美的創作性を有する場合は、「美術の著作物」として保護されることもある。
- 建築の著作物
- 地図または学術的な性質を有する図面・図表・模型・その他の図形の著作物
- 映画の著作物
- 写真の著作物
- プログラムの著作物
例示はされていないが、データベースの著作物については法12条の2第1項で触れられている。
プログラムの著作物 †
コンピュータプログラムも技術的な思想や感情を創作的に表現したものとして、著作物性が認められている。ここでいうプログラムは法2条1項10号の2で次のように定義されている。
「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう」(法2条1項10号の2)
- 情報システムにおいて著作権が認められているのは、ソースプログラム・目的プログラム・マニュアル・データベースなどの「表現」である。プログラム言語・通信プロトコル・アルゴリズムなどは「表現」ではないため、保護されない(法10条3項)。
- 大型コンピュータ用のプログラム、PC用のプログラム、家電機器・携帯電話用のプログラム、ゲームソフトなどすべてが、著作権法でいうプログラムになる。
- 未完成のプログラムであっても、プログラムといえるまとまりのあるものはプログラムの著作物として保護される。
- 著作権法で規定しているソフトウェアとは、プログラムだけでなく、要件定義書・設計書・マニュアルなどのドキュメント類も含まれる。
- 同じプログラムを違うプログラミング言語で作成する場合、その表現が異なっていたとしても、元のプログラムの翻案権を侵害する可能性がある。
- そのプログラムに特許権が成立していれば、特許権侵害に成り、不法行為として民法上の責任を追及されることも考えられる。
加工された著作物 †
二次的著作物 †
基となるほかの著作物(原著作物)に変更を加えて、新たに創作された著作物のこと。
次のような加工が対象となる。
- 翻訳
- 別の言語に置き換えられること。
- 編曲
- 音楽をアレンジすること。
- 変形
- 絵画を彫刻にすること(またはその逆)、写真を絵画にすることなど。
- 脚色
- 小説を脚本にすることなど。
- 映画化
- 小説や漫画などを映画にすること。
- その他
- 子供向けに書き換えたり、要約したりすることなど。
組み合わされた著作物 †
共同著作物 †
共同著作物とは、「二名以上のものが共同して創作した著作物であって、その確認の寄与を分離して個別的に利用できないもの」のことである(法2条1項12号)。つまり、1つの著作物全体の作成において、2人以上(法人・自然人)の著作者各自が、創作的に寄与しているもの。共同著作物の著作権は共有著作権となり、各著作者が「共同著作者」になる。
例:座談会や討論会を通じて完成した著作物
補助的に関与したにすぎない者は除外される。
共同著作権の行使については、共有者全員の合意が必要である。
[補講]ゴーストライターについて
- 有名人自身の話(口述)をそのまま文書化にしたもの⇒有名人が著作者
- 有名人から依頼を受けたライターが文書全体を創作したもの⇒ライターの著作権を有名人が譲り受けた(著作権の譲渡)
- 有名人の大筋の話をもとにライターが文書化したもの⇒共同著作物なので、有名人とライターが共同著作者となる。
集合著作物 †
各自の創作活動の成果が分離して利用できるもの。
例:1冊の本において各章を分担して執筆したとき。
結合著作物 †
歌詞と楽曲とを組み合わせた場合。
編集著作物 †
編集物(データベースに該当するものを除く)で、その素材の選択または配列によって創造性を有するもの。
例:
- 新聞
- 雑誌
- 百科事典
- 職業別の電話帳
- 法令集
- 単語帳
データベースの著作物 †
今日の社会では、データベースの多くはその利用目的・利用効率などを考慮して、データベースの構成要素となる情報についての選択・体系化などが工夫されていることから、データベースのほとんどはそこに操作性が見出され、データベースの著作物として著作権法の保護の対象となる。
データベースの著作物とは、「データベースでその情報の選択または体系的な構成によって創造性を有するもの」である(法12条の2第1項)。蓄積されたデータが、PCなどによって検索しやすいように工夫されているかが重要である。
マルチメディアの多くはこれに該当する。
例:
- (CD-ROMやPCのメモリ内などに記録されている)百科事典
- (CD-ROMやPCのメモリ内などに記録されている)法令集
- (CD-ROMやPCのメモリ内などに記録されている)辞書
- (CD-ROMやPCのメモリ内などに記録されている)職業別電話帳
- (CD-ROMやPCのメモリ内などに記録されている)データ集
著作物か否かの判定 †
著作権の対象となる著作物は、大雑把にいうと以上のようになるが、実際のところ著作物かどうか(著作物性の有無)の判定は難しいことが多い。そのため最終的に裁判によって決定しなければならない場合さえある。
そこで、裁判の焦点とされる著作物とされる条件について、補足しておく。
創作性の存在 †
創作性がなければ著作物とはなりえない。これは最も基本的な必要条件である。ここでいう操作性とは、高い芸術性とか出来栄えのよさなどはまったく考慮していないという点に注意。例えば子供が描いた絵が、仮に下手であっても著作物であり、その子供自身は著作権◆福畸作者の権利)を持つことになる。
アイデアではなく表現されたもの †
著作権の対象となるのは、アイデアではなく、表現されたものである。
例えば、ある料理人が自分の考えた新しい料理のレシピをまとめて本として出版したとする。そして、この本を購入したレストランの店主が、そのレシピを使った料理を自分の店のメニューに加えて、商売に使ったとする。このとき、「料理の作り方」というアイデアを使っただけなので、著作権の侵害にはならないのである。
ところが、そのアイデアが表現されたものである本自体をコピーして売ったりしたら、著作権の侵害になる。
また、すでに書かれている小説(表現されていることを意味する)をコピーすると著作権の侵害になるが、まだ書かれていない小説のプロット(表現されていないことを意味する)を事前に小説家から聞き出し、それを利用して自分の小説に使うのは著作権の侵害には該当しない(道義上は問題ありますが)。
固定されたものとは限らない †
著作権保護に関して遅れている米国などでは、「形あるものに、印刷・録音・録画などの方法で固定されているものだけを保護する」としているが、日本の著作権ではそのような制限はない(日本だけでなく世界の多くの国でも)。例えば、即興の演奏、アドリブの歌、原稿のない講演などは著作権の対象となる。
「映画の著作物」だけは例外で、固定されている必要がある。ここでいう映画とは、フィルムに固定された劇場用映画だけではなく、CD/DVDに固定された映像ソフト、ROMに固定されたゲームの映像部分などの、動く映像すべてを含んでいる。
[補講]TVの生放送は動く映像であっても、固定されているわけではないので、映画の著作物とはいわない。ただし、生放送で使われている物(台本・BGMなど)は著作物であるし、生放送であっても著作隣接権の対象なので録画したビデオを無断で売ることは禁止されている。
著作物には触れることはできない †
すべての著作物は、触れることができない、即ち無体物である。少しわかりにくいかもしれないが、こういうことである。例えば、作曲した本人がライブステージで歌い、なおかつ楽譜もCDも発売しないという場合がありえる。この場合でも、その曲は著作物として保護される。その人が作曲したメロディーが著作物なのであって、楽譜やCDが著作物ではないことになる(これらは単に固定する物に過ぎない)。
ここでは音楽を例にとったが、他のすべてのもの(彫刻・小説など)であっても同様のことがいえる。彫刻される像の形や小説のストーリー自体には形がないからだ。
著作権の対象となる具体例 †
- ニュースサイトのタイトルは通常著作物ではない。
- リンクを張る行為自体は著作権侵害ではない。
- 顧客の希望に合わせて分類しているサイトやマガジンは、創作的な表現が含まれるので、編集著作物であると考えられる。
- 他人の著作物を簡単に紹介する要旨を作成する行為は、複製や翻案に当たらない。
- 正当な引用であれば、著作権者の許諾なく行える(32条1項)。
- 漫画を批評するために、漫画の絵を丸ごと1コマ用いる行為は引用の目的上正当な範囲と考えられる(32条1項)。
- 原作映画の題号を日本語に翻案する場合、思い切った意訳をするなど商業的な目的で元の題号とはまったく異なる題号にする行為は、特別な契約がなければ同一性保持権(20条1項)の問題が発生する可能性が高い。
- 日本では無方式主義を採用しているので、プライバシーマークがなくても著作物として保護される。
- 一人で風呂に入っているときにある曲を歌っていたところ、声が大きくて他の通行人に聞こえてしまった場合でも、公に演奏したことにならない。
- なぜならば、公衆に聞かせることを目的としていないから。
- 橋や塔であっても思想や感情を創作的に表現したものであれば、建築の著作物(10条1項5号)として認められる。
- 外国人向けに行われる放送であっても、国内にある放送設備から行われる放送であれば、我が国の著作権法による保護を受けられる(9条2号)。
- 実演家の国籍を問わず、国内で実演されたものは我が国の著作権法で保護される(7条1号)。
- 漫画は形状や色彩が美術の著作物のジャンルに含まれるが、一方で言葉やストーリー性があることから美術の著作物と言語の著作物の二面性をもった著作物であると考えられる。
- 音楽などの著作物には貸与権が認められるが、映画の著作物には頒布権が認められているため、貸与権は認められない(26条の3)。
- 写真に写っている風景を絵画として描写する行為は、その写真の著作権を侵害する場合がある。
- 公表された著作物を、会社の入社試験を作成するために複製する場合には、通常の使用料の額に相当する補償金を支払う義務は生じない。
- 営利目的ではないので、補償金支払いの義務はない。
- 曲と歌が収録されているCDから、メロディー(楽曲)だけのMIDIを作成して、使用したいとする。このときは、その曲の楽曲の著作権者に許諾が必要である。
権利の目的とならない著作物 †
【著作権法第13条】
次の各号のいすれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
一 憲法その他の法令
二 国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
三 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁判及び決定で裁判に準ずる手続きによる行われるもの
四 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人が作成するもの
ここで示したものは、著作物ではないというわけではなく、著作物だが著作権の対象から外れるという意味である。
例:
- 権利の目的とならない著作物
- 憲法その他の法令
- 独立行政法人が発する通達
- 国等が発する通達に含まれる。
- 裁判所の判決・決定・命令その他
- 著作物(権利の目的とならない著作物に該当しないもの)
- 政府が発行する白書
- 国等が発する告示等に該当しないので、著作物として保護される。
- 政府が発行する白書
職務著作(法人著作) †
職務著作については、法15条1項で次のように規定されている。
「法人その他の使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、法人等とする」(法15条1項)
[補講]特許法による職務発明では、発明者である従業員に特許権を認めている。一方、著作権では、基本的に法人が最初の著作者となる(従業員に生じた著作権が、その後法人等に移転するという意味ではないことに注意)。この点で、特許法と著作権法は大きく異なる。
職務著作とされる場合の4要件は次の通りである。
- 「法人その他の使用人の発意」に基づくこと
- 「業務に従事する者」によって作成されたこと
- 「法人等の名義によって公表」するものであること
- 著作権について「別段の定めがない」こと
例:商品カタログ、商品マニュアル、企業のWebページ
「法人その他の使用人の発意」に基づくこと †
法人が、その業務として従業員に著作物の作成を指示する場合をいっている。従業員が、自らの提案によって上司から承認を得て、業務上の著作物を作成することも含んで考える。
ここでいう法人とは、企業などの営利企業に限らず、公共団体・学校・公益法人・非営利法人(NPO)・法人格を持たない団体(サークルなど)も含まれる。
また、使用人とは個人使用者も含む。
「業務に従事する者」によって作成されたこと †
法人と従業員との関係には、雇用関係またはそれに準ずる関係がなければならない。これは雇用契約の存在といった形式面によるものではなく、使用者の指揮監督下で労務を提供する実体があるか、労務に対する対価の性質など具体的事情を総合的に考慮して判断される。よって、法人の役員(法律上は委任関係)・契約社員・派遣社員も、ここでいう従業員に該当する。
しかし、法人が外部の者に委託・注文して著作物を作成させる請負契約などによる場合は、職務著作に当たらず、著作者は著作物を創作した外部の者ということになる。
例:ソフトウェア開発における著作者は、著作権法により次のように定められている。なお、著作者人格権は著作者だけに帰属するため「譲渡不可」であるが、著作財産権は「譲渡可」である。
- 自社で開発したソフトウェア
- 著作物の著作者は、その著作物を作った人になる。ただし、その企業の従業員が業務として作成し、法人の名義で公表されたソフトウェアは、原則としてその法人(企業)が著作者となる。
- 外部へ委託して開発したソフトウェア
- ソフトウェアを作るのは委託された企業であるので、委託された側に著作権がある。著作権法では、そのソフトウェアを作るために誰が費用を負担したかは関知しないのだ。そのため委託先の企業との間で、「開発されたソフトウェアに関わる一切の権利およびソフトウェアの所有権は、委託料が完済された時点をもって移転する」という旨の契約を取り交わしておくのが一般的だ。
- 派遣先で開発したソフトウェア
- 従業員が業務としてソフトウェアを作成した場合と同じく、出向や派遣を依頼した企業にソフトウェアの著作権がある。
- ソフトウェア(パッケージソフト)
- 著作者に無断にプログラムを改造することは、著作権の侵害になる。ただし、パッケージソフトのカスタマイズやマクロの作成など、正規ユーザーが自らそのソフトウェアを使用するための行為は、必要と認められる限度において許容されている。
「法人等の名義によって公表」するものであること †
「法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする」(法15条2項)
法15条1項により、法人名によって公表されるか、公表される予定がなければならないことがわかる。
コンピュータプログラムも職務著作については法人が著作者とされるが、コンピュータプログラムは社内のみで使用される場合もある。よって、この「法人等の名義による公表」は要件とされず、この要件がなくてもコンピュータプログラムは法人に著作権があるということになる。
著作権について「別段の定めがない」こと †
従業員と法人との間に、例えば「従業員が作成した著作物については、作成した従業員を著作権とする」などの取り決めがあらかじめあれば、それにしたがい、特別に従業員に著作権があることになる。
映画の著作物の著作者 †
映画の製作には様々な人(原作者・脚本家・プロデューサー・監督・カメラマン・俳優・エキストラ・美術担当・照明担当・音楽担当など)が携わっている。そのため、映画の著作物に関して、著作権では特別に次のように規定している。
「映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、製作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に特別に寄与した者とする。ただし、職務著作の規定がある場合には、この限りではない」(法16条)
つまり、映画は共同著作物ということになる。あるいは、もし映画制作会社が自己の従業員であるプロデューサーや監督によって製作させたなら、職務著作として映画制作会社が一元的に著作者となる。
しかし、映画の製作やその後の流通のことを考えると、映画の著作物の著作権(著作財産権)については、特別の規定が次のように定められている。映画製作者(映画の著作物の製作に発意と責任を有する者。実際に製作する映画制作会社とは限らず、映画会社・プロダクションでもよい)に自動的に著作権が移転することになっている(法2条1項10号、法29条)。つまり、法16条に規定された共同著作者が実際に行使できる権利としては、著作者人格権と映画製作者との契約によって発生した債権のみということになる。
一方、映画の原作者である小説家や、音楽を作曲した音楽家などは、そもそも別個独立した著作者または著作者隣接権者として、それぞれ固有の権利が認められているため、当規定から除かれている。
著作者 †
著作者とは、「著作物を創作した者」(企業などの団体を含む)であり(法2条1項2号)、「最初の著作権者」のことである。つまり、著作者と著作権者は異なるということである。
- 著作者
- 著作物の創作者に限られる。
- プロアマ関係なく、著作者を創作した者は、誰でも著作者になることはできる。
- 創作活動のために資金・素材を提供したにすぎない者、創作を依頼した者、創作物を監修した者、直接創作活動に寄与していない者は、著作者ではない。
- 著作権者
- 財産権である著作権は譲渡することができ、また著作者の死亡によって相続人に移転する可能性があるから、著作者とは別の者であることもありうる。
例えば、創作活動に対して、単に素材やアイデアを提供したにすぎない者は、著作者とはならない【著作者に関する判例:「スマップ事件」東京地判平成10.10.29】。
例:大学院生Aは、自分自身が着想した研究テーマについて実験を行い、研究成果を論文として発表することにした。そこで、Aは資料整理を手伝ってくれたアシスタントCの協力を得て、実験を行い、大学院生Bと共同で学会発表用の論文を完成させた。この場合、次のことがいえる。
- A,B,Cの3人が協力して作られたが、著作権者はAとBだけである。
- 補助的な役割のCは創作性を与えていないので、著作権者になれない。
- 実験テーマはAが着想したが、論文をBと共同して作成しているので、Bも著作権者になる。
- 一般に数値だけの実験結果は著作物ではないと考えられるが、論文という形で表現されていれば通常著作物であると考えられる。
著作者の推定 †
著作物を創作したら、それを創作した者が自動的に著作者になる。著作者とされるためには特別な方式を必要としないから、これを無方式主義という。
そこで、著作物の著作者が誰なのかという点が問題になる。著作権ではその点について次のように述べている。
「著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に、その指名若しくは名称(実名)又はその雅号、筆名、略称その他実名に代えて用いられるもの(変名)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する」(法14条)
よって、ペンネームや芸名といった社会的に周知の変名が表示されていれば、その表示者が著作者であると推定されるわけだ。
ただし、この規定では「推定する」といってるだけなので、もし真の著作者が他にいる場合には、真の著作者側において反証を挙げて、著作者たる地位を争うことが可能である。
著作者人格権と著作財産権 †
著作者の権利には、次の著作者人格権と著作財産権が存在する。
- 著作者人格権
- 公表権
- 氏名表示権
- 同一性保持権
- 名誉・声望保持権
- 著作財産権
- 複製権
- 上演権
- 展示権
- 貸与権
- 口述権
- 演奏権
- 頒布権
- 譲渡権
- 公衆送信権等
- 翻訳権・翻案権等
- 二次的著作物の利用に関する原著作物者の権利
著作者人格権とは、著作者の人格的・精神的利益を保持するために認められた権利のことである。著作者人格権は著作者の一身専属権(その者だけに認められる権利)とされているので、譲渡することはできない。
著作財産権とは、いわゆる著作権のことで、著作物から発生する財産的権利のことである。これは譲渡可能である。
著作権法の保護を受ける著作物と受けない著作物 †
- 保護を受ける著作物
- 日本国民(我が国の法令に基づいて設立された法人および国内に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ)の著作物(法6条1号)。
- 最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行日から30日以内に国内において発行されたものを含む)(法6条2号)。
- 前2号に掲げるもののほか、条約により我が国が保護の義務を負う著作物(法6条3号)。
- 保護を受けない著作物
- 憲法その他の法令(法13条1号)。
- 国または地方公共団体の機関または独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの(法13条2号)。
- 裁判所の判決、決定、命令および審判ならびに行政庁の裁決および決定で、裁判に準ずる手続きにより行われるもの(法13条3号)。
- 前3号に掲げるものの翻訳物および編集物で、国もしくは地方公共団体の機関または独立行政法人が作成するもの(法13条4号)。
著作物の自由(無断)利用 †
著作物の自由利用ができる場合は、次の場合である。
- 私的利用のための複製(法30条)
- 図書館等における複製(法31条)
- 引用(法32条)
- 教科書等への掲載(法33条)
- 学校教育番組の放送等(法34条)
- 学校その他の教育機関における複製(法35条)
- 試験問題としての複製(法36条)
- 有料で実施される営利目的の模擬試験などの場合には、通常の使用料の額に相当する補償金を著作権者に支払わなければならない(法36条2項)。
- 入試問題集や検定試験の過去問題集を作成するときは、素材とする試験問題の著作者の許諾を得る必要がある。
- 展示による複製、障害者のための自動公衆送信(法37条)
- 営利を目的としない上演等(法38条)
- 時事問題に関する論説等の転載等(法39条)
- 政治上の演説等(法40条)
- 時事の事件の報道のための利用(法41条)
- 裁判手続等における複製(法42条)
- 放送事業者等による一時的固定(法44条)
- 放送事業者および有線放送事業者は、法23条第1項に規定する公衆送信権等について、著作者から許諾を得たときは、自己の放送等のためにその著作物を一時的に録音・録画することができる(法44条1項、2項)。
- ただし、録音または録画物は、原則としてその収録または放送後6ヶ月を超えて保存することはできない(法44条3項)。
- 美術の著作物の原作品の所有者による展示等(法45〜47条)
- 美術の著作物または写真の著作物の原作品の所有者またはその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる(法45条1項)。
- 元作品の所有者による展示、所有者から借り受けて展示会を催す者による展示について自由利用を認めたものである。
- しかし、街路・公園・建物の外壁などの一般公衆に見やすい屋外に、恒常的に設置する場合には、自由利用が認められず、著作者の許諾を要する(法45条2項)。
- 彫刻やオブジェといった屋外の著作物や、建築の著作物は、そもそも公衆に向けられた著作物なので、原則として写真撮影などの方法を問わず自由な利用を認めている(法46条1項)。
- しかし、その著作物のレプリカを製作したり、模倣建築をしたり、販売目的(ポスター・絵葉書など)で複製する行為は、自由利用の範囲を超えており、認められない。
- 法25条に規定する著作者の展示権を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説または紹介をすることを目的とした小冊子(無料パンフレットなど)に、これらの著作物を掲載することができる(法47条)。
- 美術の著作物または写真の著作物の原作品の所有者またはその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる(法45条1項)。
- プログラムの著作物の副生物の所有者による複製等(法47条の2)
- プログラムの複製物の所有者は、自ら当該著作物をPCにおいて利用するために必要と認められる限度において、著作物の複製または翻案をすることができる(法47条の2)。
- これはプログラムの所有者(借りている者は含まれない)が、自らのコンピュータ利用において、バックアップやバージョンアップすることは問題ないことを意味している。
- 複製は「必要と認められる限度」において認められるので、例えば他のコンピュータで利用するためにコピーするなどは著作権侵害である。また違法コピーと知りながら使用する行為も著作権侵害である(法47条の2第1項但書)。
- プログラムの所有者が、そのプログラムを譲渡して所有者でなくなった場合は、バックアップしたプログラムなどはすべて消去しなければならない(法47条の2第2項)。
- プログラムの複製物の所有者は、自ら当該著作物をPCにおいて利用するために必要と認められる限度において、著作物の複製または翻案をすることができる(法47条の2)。
- 自由利用による複製された複製物の譲渡(法47条の3)
著作権の保護期間 †
- 原則
- 著作者の死後(共同著作物の場合は最後に死亡した著作者の死後)、50年を経過するまで。
- 50年の起算日は、著作物が公表された日の属する年の翌年1月1日とする(法57条)。
- 無名または変名の著作物の保護期間
- 公表後50年''を経過するまで。
- 50年の起算日は、著作者が死亡した日の属する年の翌年1月1日とする(法57条)。
- ただし、死後50年を経過していると認められるときには、著作者の死後50年を経過したと認められるときのいて、消滅したものとする。
- 団体名義の著作物の保護期間
- 公表後50年を経過するまで。
- ただし、その著作物が公表されなかったときには、創作後50年を経過するまで。
- 50年の起算日は、著作物が公表された日または創作された日の属する年の翌年1月1日とする(法57条)。
- この規定は、法人その他の団体名義で公表された著作物であれば、法15条による職務著作に該当する著作物か個人の直作物かは問わない。
- 公表後50年を経過するまで。
- 映画の著作物の保護期間
- 公表後70年を経過するまで。
- ただし、その著作物が公表されなかったときには、創作後70年を経過するまで。
- 70年の起算日は、著作物が公表された日または創作された日の属する年の翌年1月1日とする(法57条)。
- 公表後70年を経過するまで。
例 †
- 実演の保護期間は、実演が行われた日の属する年の翌年から起算して50年である。
- 連続ドラマは逐次著作物であり、そのドラマの最終回放送時が公表のときとされる。よって、そのときから保護期間が開始される。
著作権の譲渡 †
著作権はその全部または一部を譲渡することができる。この場合、契約書の交換の有無を問わず、譲渡人と譲受人との合意により著作権譲渡契約は効力を生じる(法59条)。
[注意]著作者人格権は譲渡できない。
譲渡契約に特約がない場合には、著作権のうち法27条(翻訳・翻案件等)および28条(二次的著作物の利用に関する原著作物の権利)は、譲渡人に保留されたものと推定される(法61条)。
著作権の消滅 †
次の場合に、著作権は消滅する。
- 法51条から54条に規定する保護期間を経過した場合
- 著作権者が相続人なくして死亡した場合
- 著作権者たる法人等の団体が解散した場合
- ただし、会社合併などで権利が他の法人に継承される場合には消滅しない。
著作物の利用許諾 †
著作者は、他人に対して、その著作物の利用を許諾することができる(法63条)。
登録 †
著作者または著作権者は、次の登録をすることができる。
- 無名または変名で公表された著作物の著作者による実名の登録(法75条)
- 第一発行年月日等の登録(法76条)
- 創作年月日の登録(法76条の2)
- 著作権の譲渡等による移転の登録、質権設定の登録(法77条)
登録を受けると、その登録事項が事実であるものと推定されるため、紛争の際に証拠とすることができる。
また、著作権の譲渡等による移転は、登録をしなければ第三者に対抗(自己へ権利移転があったことを主張)することはできない。
著作権の侵害 †
- 著作者人格権の侵害
- 公表権の侵害
- 著作者の意思に反し、未公表の著作物を公衆に公表すること。
- 指名表示権の侵害
- 著作者の意思に反し、著作物に実名または変名を表示し、または表示しないこと。
- 同一性保持権の侵害
- 著作者の意思に反し、著作物の内容または題名に削除や改変を加えること。
- 公表権の侵害
- 著作財産権の侵害
- 複製権の侵害
- 無断で著作物をコピー・ダビングし、または講演・講義を録音すること。一部の複製や多少修正を加えた複製を含む。
- 上演・演奏権の侵害
- 無断で脚本をもとに演じ、楽曲をもとに演奏すること。
- 上映権の侵害
- 無断で著作物を映写すること。ただし、映画の著作物に限定はしない。
- 公衆送信権等の侵害
- 無断で著作物を放送またはインターネット送信(アップロードを含む)すること。
- 口述権の侵害
- 無断で講義や講演の録音物を公衆に聴かせること。
- 展示権の侵害
- 無断で美術の著作物の原作品や未公表の写真を展示すること。
- 頒布権の侵害
- 無断で映画の著作物(複製物)を譲渡(販売等)・レンタルすること。
- 譲渡権の侵害
- 無断で映画以外の著作物(複製物)を譲渡(販売等)すること。
- 貸与権の侵害
- 無断で映画以外の著作物(複製物)をレンタルすること。
- 翻訳・翻案権等の侵害
- 無断で原著作物をもとに、翻訳・編曲・変更・翻案等を加えて新たな著作物を創作すること。
- 二次的著作物の利用に関する原著作者の権利の侵害
- 二次的著作物の利用については、二次的著作物の許諾の他に、原著作物の著作者の許諾も必要であり、原著作物の著作者に無断に、二次的著作物を利用すること。
- 複製権の侵害
また、著作権法により、次の行為は著作権を侵害するものとみなさられる。
- 侵害行為によって作成された物の輸入・頒布(法113条1項)
- 侵害行為によって作成されたプログラムの複製物の業務上の使用(法113条2項)
- 権利管理情報の改変等(法113条3項、4項)
- 国外頒布目的商業用レコードの輸入等(法113条5項)
- 名誉・声望を害する方法による利用(法113条6項)
権利の救済 †
権利救済のための措置として、次が挙げられる。
- 紛争解決のためのあっせん制度(法105条〜111条)
- 民事的措置(訴訟外または訴訟上)
- 差止請求権(法112条)
- 名誉回復措置請求権(法115条)
- 不法行為による損害賠償請求権(民法709条)
- 不当利得返還請求権(民法703条)
- その他、訴訟外の紛争解決(和解・調停・仲裁合意)
- 刑事的措置(法119条〜124条)
・著作権法に規定される紛争解決のためのあっせんは、当事者が文化庁長官に対して申請して行われる手続きである(法106条)。
・法60条または法110条の3に定める著作者または実演家の死後における人格的利益の保護規定に違反した者は、500万円以下の罰金刑(刑事罰)に処せられる(法120条)。
・法人の代表者・代理人・使用人・従業者が、その業務に関して著作権等を侵害したときは、行為者を罰するほかに、その法人に対しても罰金刑が科せられることがある(法124条1項)。
著作隣接権 †
創作された著作物は、その著作者に様々な著作権が認められているが、著作者単独で広く公衆に伝達することは困難である。そこで、著作権法では、「著作権ではないものの、著作物に新たな価値を加えて公衆に伝達を行う一定の者・事業者」に対して、著作隣接権に関する規定を設けて、その権利利益の保護をはかっている。
著作隣接権は、登録などは必要なく、著作権同様に無方式主義である。
著作隣接権は次の4者に与えられる。
- 実演家
- 歌手、演奏家、オーケストラの指揮者、手品師・奇術師、ものまね師
- レコード製作者
- レコードの原盤・マスターを製作する者
- 放送事業者
- TV局
- 有線放送事業者
- CATV
[注意]サッカーなどのスポーツは芸能的性質はないので、実演に含まれない。 ◇
各権利者の権利 †
実演家の権利 †
- 実演を録音し、または録画する権利を専有する(91条1項)。
- 実演の送信可能化する権利を有するが、自動公衆送信権を有してはいない。
- 映画の著作物において録音・録画された実演については、実演家の権利は及ばない(91条2項)。
- これをワンチャンス主義という。
- 実演家のみ氏名表示権や同一性保持権などの人格権が認められている。
- 実演家は複製権を有しない。
レコード製作者の権利 †
- レコード製作者の貸与権は、一定期間経過後に機能しなくなる(97条の3第2項、政令)。
- その期間を過ぎた場合には、二次使用量を支払うことにより商業用レコードを貸与することができる(97条の3第3項)。
放送事業者の権利 †
有線放送事業者の権利 †
「レコードに録音された実演」と「ビデオに録画された実演」の違い †
- レコードに録音された実演(歌や音楽演奏など)
- その後のコピー・アップロード・レンタル・放送・有線放送についても実演家に権利がある。
- ビデオに録画された実演(俳優の演技など)
- 最初の録画(撮影)についてのみ実演家に権利があり、その後の行為(ビデオの生産・レンタル・TV放送)については権利がない。
- 最初に録画するときのみ一回だけ権利行使ができるので、このルールをワン・チャンス主義と呼ばれる。
- 最初の録画(撮影)についてのみ実演家に権利があり、その後の行為(ビデオの生産・レンタル・TV放送)については権利がない。
つまり、俳優よりも歌手のほうが権利が多いということになる。
歌手はCDのプレス枚数や放送回数に応じた支払いを受ける権利がある。しかし、もしビデオの生産・レンタル・TVの再放送の度に使用料を徴収したければ、俳優たちは最初の撮影のときにそのような契約をしておく必要があるのである。
著作隣接権の保護期間 †
- 実演
- 実演を行われた日の属する年の翌年1月1日から起算して50年。
- レコード
- その音を最初に固定(マスター製作)した日の属する年の翌年1月1日から起算して50年。
- 放送
- 放送が行われた日の属する年の翌年1月1日から起算して50年。
- 有線放送
- 有線放送が行われた日の属する年の翌年1月1日から起算して50年。
著作隣接権の制限(自由利用) †
著作隣接権の譲渡 †
著作隣接権は、その全部または一部を他人に譲渡することができる。また利用許諾(契約)することもあできる。
著作隣接権の譲渡は、その移転の登録をしなければ第三者に対抗することができない。
著作隣接権の消滅 †
次の場合に、著作隣接権は消滅する。
- 保護期間を経過した場合
- 著作隣接権者が相続人なくして死亡した場合
- 著作隣接権者たる法人等の団体が解散した場合
共有に係わる著作隣接権 †
著作隣接権が共有に係わる場合には、各共有者は他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、または質権の目的とすることはできない。
また、著作隣接権は、共有者全員の合意により行使することを要する。ただし、他の共有者は正当な理由がない限り、これら同意や合意の成立を妨げることはできない。
著作隣接権の登録 †
次の事項は、登録しなければ、第三者に対抗することはできない。
- 著作隣接権の移転(相続その他の一般継承によるものを除く)または処分の制限
- 著作隣接権を目的とする質権の設定・移転・変更・消滅(混合または著作権もしくは担保する債権の消滅によるものを除く)またはの制限。
登録は、文化庁長官(文化庁著作権課)により、著作隣接権登録原簿に行う。
一般個人のプライバシー権の保護 †
名声・社会的評価・知名度などを獲得した有名人の肖像や氏名には、それらを付した商品などの販売を促進する力(顧客吸引力)がある。経済的価値について、正面から権利として認められる規定は現在の法律にはないが、その有名人の獲得した名声などから生じるものなので、その有名人に帰属する財産として保護されるべきものである。有名人がこの経済的価値を排他的に支配する財産的権利をパブリシティ権といい、日本においても複数の裁判例において認められてきた。
パブリシティ権は有名人にしか認められないが、有名人ではなくパブリシティ権が認められないような一般的な人物の肖像などであるからといって、自由に使用してよいわけではない。今日のマスコミの発達した社会においては、個々人の尊厳を保ち幸福の追求を保証するためには、私生活をみだりに後悔されないという保証が必要不可欠である。この保証をプライバシー権という。この権利は、多数の裁判例において認められてきた。
プライバシー権を侵害する行為に対しては、侵害行為の差止請求や精神的苦痛による損害賠償請求をすることができるものとされている。
パブリシティ権とプライバシー権の両方とも成文法としてではなく、判例上認められた権利である。
プログラムに対する著作権 †
- 委託を受けて作成した職務著作のプログラムは、別段定めがない限りプログラムを作成した担当者が所属する企業に著作権がある。
- プログラム作成者に著作権はない。
- したがって、独断で協力会社に配布することは著作権の侵害にあたる。
- ソースプログラムとオブジェクトプログラムの両方とも著作権法によって保護される。
- 著作物を作成するために用いるプログラム言語や規約は、著作権法による保護の対象外である。
- 開発されたプログラムの著作権の帰属に関する規定が契約に定められていないとき、著作権の原始的な帰属は次のようになる。
- 請負の場合は発注先に,派遣の場合は派遣先に帰属する。
ソフトウェアに対する著作権 †
- ソフトウエアの著作権は、ソフトウエアの製造元にある。
- 無断でソフトウエアを改変したり、複製した場合は著作権法違反である。
- 自分の持っているコンピュータに合わせるなどの目的で、改良を加えることは認められている。
- 使用許諾契約の場合、使用者は著作権を取得できない。
- ソフトウェアパッケージの購入時の契約に担保責任が含まれている場合がある。
参考文献 †
- 『図解よくわかる個人情報保護法』
- 『ビジネスコンプライアンス検定 初級 問題集』
- 『ビジネス著作権検定 上級 問題集』
- 『ビジネス著作権検定初級・上級完全対策[第3版]』
- 『合格情報処理 2006,9月号別冊付録 情報処理技術者試験シスアド・基本情報 午前の教科書』
*1 incentive「刺激」「動機」
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